ごくり。その音と共に精液が嚥下されていく様はいつ見ても興奮する。
俺のそれがねーちゃんの喉を通って、今きっと食道を通っているんだろうとか、もう胃に達しただろうとか、そういうことを考えるだけで正直何回だってイける気がする。口の端に零れた滴を親指で拭って口の中に突っ込めば、赤く生温かい舌にねろりと舐め取られた。放った全てがねーちゃんの体内に納まったのだと思うと、これ以上無い満足感に身が包まれるの分かった。
新たな生命としてその身を宿すどころか、消化されて排出されるだけにも関わらず、自分の持つ命の欠片の数々が好きな人の中に今この時存在していることが嬉しくてたまらない。最早マーキングに近いような気もするが、エロいからとか、支配欲を満たすからとか、それだけの理由では決して無いのだ(と思うことにしておく)。
赤みを帯びる頬とか、度重なるキスに腫れぼったさを見せる唇とか、吸い付き過ぎてぷっくりと膨れた乳首とか。白い肌に映える桃色が艶かしい。

「なあ、もっかいしよ」
「も、むり」

気だるそうに見上げてくるねーちゃんなどお構い無しに、俺は額にわざと音を立てて唇を落として、耳元で低い声で囁く。そう。この人はこれに弱いのだ。

「ちょっと、ナル、ト」
「ねーちゃんだって足りねーだろ?」
「足りて、っん、」

もう黙ってと、俺の言うとおりにしてよと言わんばかりに無理やり口を閉じさせれば。
先ほど口内に放ったせいもあり少々苦いキスにあまり良い気はしなかったが、それ以上に目の前のご馳走を貪りたいと脳が過剰に身体に信号を送ってきた。それに一度突っ込んだねーちゃんの秘部はまだとろとろに蕩けていて、二ラウンド目を今か今かと待ちわびているようにしか思えない。
そんなことを口にしたら当然怒られるが、それでも俺は思うのだ。普段全然興味無いみたいな顔をしているくせに、性に従順であると。なにせ昼間の俺と言えば主導権など取れたものではないが、いざこうして腕に閉じ込めて事に及んでしまえば縋りついてくるのは彼女の方なのだから。
だからこそ今までもそうだったのだろうかと考えるだけで虫唾が走る。でも俺が初めてじゃないのだから、過去にねーちゃんを抱いた男が実在しているのは確かだ。一体どんな風にこの人を抱いて、一体どんな風にこの人を泣かせてきたんだろう。相手は忍だろうか。暗部時代の誰かだったのだろうか。ちらりと脳を横切る銀髪の、いやないないない、そんなのない。ヘッドギアの、いやないないない、そんなのない。
とにもかくにも快楽に従順に喘ぐこの姿が、誰かに仕込まれたのだとしたら、非常に腹立たしい。どうして俺じゃなかったんだろう。年の差を埋められたらどんなに素晴らしいことか。もっと早くにこういう関係になって全てを奪い去ってしまえたなら。ねーちゃんの相手だったろう不特定の誰かを想像すると、胸の内の嫉妬心がむくむくと膨らむのが分かった。

(ねーちゃんは、俺のだってば)

「や、ナルト、だめ、だめだって」
「いいじゃん、どうせアンダーで見えないんだし」

俺のだという絶対的な証が欲しい。首筋にも、鎖骨にも、谷間にも。体の中でも薄い皮膚を持つ至るところに跡を残していけば、これまた白い肌にくっきりと浮かび上がる濃い赤色。
でもこれじゃない、こんな表面的なものじゃ駄目なのだ。もっと、もっと何か、確固たる証が欲しい。

「そういう問題じゃ、こら、ちょっと!」

じたばたとしだす行儀の悪い足首を其々掴み、膝を曲げさせそのまま頭の方へと持ち上げれば、これ以上無いだろう恥辱的な格好のでき上がり。赤ん坊のおしめを変えるような体勢に、ねーちゃんの体がふるふると震え出す。顔を真っ赤にして俺を睨んだところで何も怖くは無い。それどころか逆効果だ。そういう態度が火をつけるって分かっててやってんの?だとしたらすげーエロいんだけど。

(あー、ぜってー泣かす!)

俺のことが欲しくて欲しくてたまらないって所まで。徹底的に。

「・・・ッひゃ、こら、ナルッあんぅ」

チロリと尖らせた舌先で秘部の周りを縁に沿って弄れば、もう数え切れないほどの行為で開かれた身体が悲鳴を上げた。そうしてくねくねと動かしながら陰核も同じように舐める。するともどかしいのかねーちゃんの腰がじわりと動き始めるのだからたまらない。ひくひくと下の口もつられて動き出すが、こんなのまだ序の口だ、耐えてもらわねばこっちが困る。

「やん、だ、めえ、っ」

じっくりと、そしてゆっくりと。
同じ動きを三周もすれば、上がり始めた息に湿り気が帯びていて。ゆらゆらとした瞳が俺とぶつかった。切ない表情を視覚が取り込み、脳内でアドレナリンに変えては俺の腰を刺激する。かわいい。いやらしい。えろい。たまらない。もう焦らすのなんてやめてこのまま一つになってしまおうか。そうしたいぐらいに俺はこの人に夢中なのだ。

ねーちゃん」
「・・・なに?」
「す、き、すき」
「・・・ッ」

それからすぐに顔を下に向けてしまったから、この台詞の後のねーちゃんがどんな顔をしたかは分からない。でもきっと耳を赤くしているに違いないと思い、わくわくする心臓を押さえながら俺はまた焦らす作業に戻るのだ。舌先で陰核の先端をちろちろと刺激するとビクリと足が大きく動く。感じている証拠だ。

「っあ、あ、やぁっ」

膨らんできた芽に今度は口全体でしゃぶりつく。それもわざと音を立てて。溜めた唾液を纏わせた舌を縦横無尽に動かせば、過ぎた感覚をやり過ごそうとねーちゃんの足が強い力で内側に戻ってこようとする。それを許すまいとそれ以上の力で押さえつけ、快感から逃げられないようにすると、今にも泣きそうな声で俺の名を呼ぶものだから、いい加減余裕がなくなってくる。

「ふあぁん、なるとぉ」

両手で顔を覆い隠し必死に耐えていてるねーちゃんの姿がちらりと垣間見えて、どくりと中心に血が集まるのが分かった。一度口を離して自分の股にぶら下がるものを見れば、そこは立派に勃ち上がり、先端からは先走りが滲み出ている。わかる、わかるってばよ。ギンギンにもなる。ねーちゃんが悪い。
焦らしているのは自分の筈なのに、こちらが焦らされている気になってしまうのは何故だろう。

「ふっ、あっ、ぁ」

もうすっかりと自己主張をする陰核に強目に吸い付いた後、今度は膣口に舌先を少しだけ挿入し、内壁にそってぐるりと一周してみせれば、声にならない音を吐き出しながらもそこはしっかりと舌を締め付けてきた。
愛液を分泌させてるのが自分なのだと思うと、また背中がぞくぞくした。精液と違って苦くないそれは、ねーちゃんのと思うだけでいくらでも舐めれる気がする。ああでも早く挿れたい。この温かな中に早く入りたい。

「ねーちゃん、俺が欲しい?」

足を押さえつけられ屈辱的な格好をしたままのねーちゃんが熱に浮かされた瞳で俺を捉えた。

「・・・っ」

物欲しそうな眼に、正直な身体に。
なのに肝心の口は強情なのだ。

「言ってくれなきゃわかんねーってばよ」

ピン、と指で陰核を弾くのに合わせてねーちゃんは腰を振るわせた。

「・・・ナル、トが」
「俺が?」
「・・・ッほし、い・・・っ」

一心に俺だけを見つめる熱い瞳。
心臓が波打つのと一緒に得たいの知れない心地良い温かさがじんわりと身体を襲った。
だけどもう少し、あともうすこし。

「ねーちゃんてばえっちだな〜」

ガチガチに勃ち上がった先走りで濡れる先端を割れ目に擦り付ける。お互いの体液でぬめるそこはまさにこれから待ち受ける高みだ。そしてゆっくりと肉壁を押しやった。まるで意思を持った生き物のように食いついてくるが、雁首までは挿れてはやらない。一番太いところが膣口を広げるか広げないかのギリギリのところをゆるく抜き差ししていると、痺れを切らしたようにねーちゃんの腰が俺を捕まえようと動き出す。欲しがっているのは一目瞭然だった。自分より幾つも年上の、あられもない姿。これより興奮する画がこの世にあるってんなら今すぐ目の前に持ってこいってんだ。

「ッナル、ト」
「ん〜?」
「うそ、つきっ」

いつまでたっても先へ進む気のない俺にねーちゃんは何か言いたげだ。何か、だなんてそんなこと百も承知だがやはり直接それを本人に答えて貰いたい。セックスの時ぐらい、自分を抑えなくて良いじゃないか。欲だけを求める行為に人間も動物も無い。だから本能のままに俺を求めて欲しい。邪魔な理性なんて捨てて見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいぐちゃぐちゃな姿で俺を求めて欲しい。
でもそれができないねーちゃんは、ふいと顔を逸らしてしまう。むちゃくちゃかわいいし、今すぐ奥まで突っ込みたいけど、でも今日はそれじゃ駄目なのだ。

「俺はこのままでも十分気持ち良いけどな〜」

もちろんそれも本当だ。視覚から聴覚から与えられた性の数々は、挿入する前から十分にその効力を発揮していたし、こうして意識して我慢しなければ亀頭が肉壁に刺激されるだけで十分達せる。

「・・・っ」
「言ったろ?言ってくれなきゃわかんねーって」
「言った、もん」
「もっとちゃんと言ってよ」

滲んだ涙でねーちゃんの睫毛は濡れていた。一段階落とした照明に照らされて光るそれすらも、の俺を攻撃するのに十分な力で。だから恥じらいの捨てきれぬねーちゃんを促すように、こちらからズンと腰をついて雁首まで埋めれば、それに合わせて上ずった声が部屋に響いた。
しかしそこまでとまた引き抜く。すると焦らされたお互いの体液が結合部分で卑猥な音を立てた。仕方ない。少しぐらいはリードしよう。

「な?ねーちゃん?俺の?」
「・・・ナ、ナルト、の」
「俺のチンコにどうされたいの?」
「お、奥、までっ・・・挿れて、おねがい・・・ッ」

言うや否やねーちゃんの頬を涙が伝った。泣かすという当初の目的はこれで達成された訳だが、少々焦らしすぎてしまっただろうか。泣いてる顔もめちゃくちゃ可愛いけれど、若干の罪悪感に見舞われる。でも俺だけを欲するねーちゃんに心は今充電マックスです。

「素直が一番だってばよ」

濡れた睫毛に唇を落とし、待ち焦がれたそこにゆっくりと己を進めると、もう既に一度事を済ませたとは思えないほどにそこは俺を締め付けてきて。

「きっつ・・・ッほんとにこれ二回目?」
「あッ、は、やぁっあっも、ばかっ」
「痛くない?平気?」
「だい、じょ・・っ」

襲い来る甘美な熱に俺の頭はチカチカし出す。込み上げてくる射精感を必死に耐えながら押さえつけていた足を解放し、その代わり膝を抱えて一気にその距離を詰める。そうして今までシーツをぎゅっと掴んでいたねーちゃんの腕が、汗でぬめりながらも俺の首元に回ってきたものだから一気に幸福感に包まれたのだった。

「やあっあっナル、あっ」
「いやなの?やめる?」
「ふぁっあっや、だめ、やめなっで・・ぁあっ」
「へへ、可愛いってば」

ねーちゃんの好きなところにぐんぐんと腰を押し付けるも、焦らされたのはこちらも同じようでテクニックなんてあったもんじゃない。ようやく与えられた強い刺激にねーちゃんは甘い声と熱い息を吐き出す。瞳ももう焦点が不安定だ。その姿に脳も心臓も沸騰しそうなぐらいに沸き立ち、俺はもっともっととガンガン腰を突きつけた。

「あぁんっあっああっ、は、ァッ」

過ぎた快感に耐え切れず引き気味になる彼女の腰を逃げられないように押さえつければ、普段の整った顔からは想像できない程の淫靡な姿がより一層その色を増すのだ。年上のプライドとか、そんなの関係ないんだ。ただ俺だけを見て、ただ俺だけを感じて。

「っは、ねーちゃん、きもちい?」
「うっ、ん」

汗で張り付いた前髪を掻き分け、露になった額に俺もこつんと額をぶつけた。小さく頷いたのをしっかりと確認し、瞼や鼻先や頬や口にキスの嵐。愛おしい。好きが止まらない。「好き」なんて、たった二文字の言葉なのに。それを伝えるのは何でこんなにも難しいんだろう。ねーちゃんを泣かせたいけど、本当は大事にしてやりたい。でも大事にしてやりたけど、本当は泣かせたい。もうむちゃくちゃだ。どうしたら、俺がねーちゃんのことをどのぐらい好きかって伝えられる?もし「気持ち」という形を持った器官がどこかにあるならば、引きずり出して自分のそれと一体化させたい。言葉で埋められないから、身体で、態度で示すしかない人間はなんて不器用なんだろう。

「っふ、あ、ぁっなる、なると」
「ん?なに・・・ッ!!!」
「か、お」
「顔?」

なけなしの力でぐいと顔を引き寄せられ、唇に当たるは自分よりふっくらとし柔らかいそれ。戸惑った俺が腰を止めたのを良いことに、ねーちゃんは俺の頭を掻き抱きながら舌を割り込ませてくる。好きだなんて言葉はそこには無かったけど、これが何を意味してるかなんて、わかるだろ?
お返しにこちらからも舌を絡ませ歯列をなぞってやる。ねろねろと絡み合う唾液に、舌に。キスに夢中になっていると、動きを止めたせいで、続きは?と言わんばかりにねーちゃんの秘部がきゅんきゅんと俺を締め付けてきて。

「も、いかせてえ」

そう言われて唇を食まれてみろ、我慢できる男なんてこの世にいないんだ。

ねーちゃん、一緒にイこ」
「あっ、あっ、ひぅ、あぁっ」

高揚した身体が俺の動きに合わせてたどたどしく動きを追い始める。
揺れ出した髪からシャンプーの仄かな香りが汗に混じりだして、赤くなった目じりからはぽろぽろと涙が零れ出し、つんと立った乳首が己を主張しながら乳房と共に揺れ、足先はぎゅっと丸められていて。

「やぁっも、いっちゃ、あっあっナルっあっ」
「ハッ、ねーちゃ・・・ッ」

高みはすぐそこだ。
子宮口に付いてるんじゃないかというぐらいに、一際強く打ちつけて。

「っ、ぁ、ぁっあっああっ」
「ッく・・・ッ」

収縮のすぐ後にギチギチと締め付けられたまらず中に吐き出せば、その感覚に身を捩じらせながらたまらなそうにねーちゃんがまた声をあげた。出して終わりの男にはない快感はきっと相当なものなのだろう。乱れた呼吸を整える間すらねーちゃんの中は俺を離してはくれずにまだひくひくとその身を震わせている。その収縮の感覚が亀頭を一定のリズムで刺激してくるのだ。目の前で俺が乱した彼女の性の残骸を掻き集めれば、あと一回ぐらいできそうな気さえしてしまう。

「いきっぱ?息しろよねーちゃん」

快感を追っているのか、それとも耐えているのか、はたまたどうしようもないのか、それは分からないが、絶頂の最中、ねーちゃんはよく息することを忘れる。

「・・・っは、あ、ぁ・・・っ」

手で支えなくともねーちゃんの足はもう力を失っていて、だらりと投げ出されている。閉じることすら忘れて放心状態だ。
秘部の締め付けが段々とゆるやかになったのを見計らってズルリとペニスを抜き出すと、出し切れず先端に残った精液がぷっくりと浮き出てきた。それを扱いてねーちゃんの腹に吐き出すと、これまた卑猥な光景が出来上がるのだからたまらない。なんなの?ねーちゃんてば何者なの?

「は、ナル、ト」
「ん?起きる?」

伸ばされたねーちゃんの手をとってその身を起こそうとしたら、さっき腹に放った一滴が透明な液体になって身体を滑っていった。そうして少しだけ力を入れて引っ張ると、一体どうしたことだろうびくりと身体を震わせて固まるものだから俺もついつい止まってしまう。

「・・・っち、力入れたら、出ちゃう」
「・・・へ?」
「ナ、ナルトの、その、あの・・・ッ」

一瞬本気で理解できなかったが、耳も顔も真っ赤にさせて視線を下にずらすねーちゃんを追えば、膣口から今にも零れそうな俺の分身君たち。

「あーっもーっなんなんだってばよねーちゃんエロすぎ!!!」


ああ、結局俺はこの人に敵いはしないのだ。









ラ・カンパネラ








(2014.11.22) 
(2017.5.19)         CLOSE