ある日買い物の帰りに彼女は言った。俺の誕生日には一際大きな秋刀魚を買って七輪で焼こうと。目が痛くなるのもまた乙なものだし、美味しさもひとしおだと。それから甘くないお団子を作って美味しいお酒を飲みながら月を眺めようとも言っていた。そのあと直ぐに、「これじゃあいつものお休みの日と変わりないか」なんて彼女は自分でツッコミを入れていたけれど、俺はそういうゆっくりとした時間を彼女と過ごすのが好きだった。だから特別なことをするよりもお前といたい、と答えた。すると彼女は心底嬉しそうな笑みを浮かべていた。それはまるで辺りに春が訪れたかのようで、草花の芽吹きに似ていた。彼女が歩いたところ全てが煌いて見えていたのだ。人間の笑顔はなんて素晴らしいのだろうと思うとともに、どうして彼女の笑顔がこんなにも自分の心を焦がすのか、不思議でならなかった。
なんてことが半月前にあった。その時はまだ蝉が五月蝿いぐらいに鳴いていて、秋の「あ」の字も感じさせなかったけれど、ここ何日かで川辺にはススキが顔を覗かせるようになっていたし、なにより夕暮れ時に夏の終わりの匂いが混ざっていた。季節の変わり目はどこか寂しく、どこか懐かしさを孕んでいる気がしてならない。過ぎ行く哀愁と間近に迫る高揚が、鼻を通して全身を駆け巡るのだ。
昨日も一日里は平和だった。子供たちが駆け回り、大人たちは商いに勤しんでいた。夕方になれば任務帰りに飲み屋へと連なる忍たちに、夕飯の買い物に子供と歩く母親を目にした。空気はとても澄んでいて、家へ帰る鳥の鳴き声もよく響いていたし、川面は夕日を受けて龍の鱗のように輝いていた。
朝起きて、食事をして、働いて、家に帰って、眠って。そう、里は何も変わらない。穏やかな日々が過ぎていく。なのに。

「そうか、何の痕跡もなし、か」
「無事送り届けてもらった後、さんはそのまま帰ったと依頼主は言っていました」

味気ない。色もない。匂いもない。俺の世界は灰色だ。

任務に送り出したの帰還予定日から一週間。これまでも帰ってくるのが遅れることはしばしばあった。しかしそのどれもに、彼女は何かしらの知らせを寄越してきていた。だからこうして何の音沙汰も無いのは初めてのことだった。サイを筆頭に、忍犬たちも一緒に捜索へと向かわせたが結局何もわからずじまい。火影という役職の手前、平生を装いながらもいよいよ覚悟を決めねばならないと、焦燥が体中を産毛の先まで走り散る。

「・・・水影から何か連絡は来ましたか?」
「いいや、音沙汰なしだ」

彼女に頼んだ任務は行商人の護衛任務だった。彼らは火の国から東へ進んだところにある島の住人で、島の特産品などをよくこの地に卸しに来てもらっている。特に海底火山を有するため温泉地としても有名で、その島でしか取れない泥は美肌に良いらしく、今も大名をはじめとした美に五月蝿い金持ちたちに人気の品だ。
国土的には水の国に所属するその島だが、わざわざ出向いてもらっていることから、護衛は昔から木の葉の忍が担ってきた。連合として五カ国が協力状態にある今だからこそ、何の問題もなく行き来できているが、それまでは特別通行許可証を提げていたとしても、その雰囲気は険悪だったらしい。もともと水の国の人たちも、霧隠れの忍たちも秘密主義者であったし、行商護衛としての条約はあれど、国同士の明確な協定条約がないのだから、他里の忍に踏み入られるのは嫌だったのだろう。とはいえ今はもうそんな時代ではない。先の大戦の巧妙か、お茶でも飲んでいきなさいよ、と言われる程に友好的な関係へと昇華している。とはいえど、水影から一向に連絡が来ないのはとても気がかりなことだった。

「すみません、お力になれず・・・」
「いや、お前が気にすることじゃないよ」
「・・・カカシ先生、少し休まれたほうが」
「悪いね心配かけちゃって。大丈夫だよ」

でも、とサイが言いかけた時だった。

「ほっ火影さま!!!」

執務室のドアを喚声とともに、破竹の勢いで男が一人押し入ってきた。彼は確か門番をしている特別上忍だ。入ってくるや否や噴き出す汗を袖で拭いながら、慌てたように口を開く。

「いっ今すぐ門に!」
「何があった?」
「それが・・・っ」

余程の狼狽振りに、何の緊急事態かと空気が一気に転変する。すぐさま彼から返って来た答えを、一体誰が予想することができただろうか。

「み、水影が、里にやってきたんです!!!」



*



走りながら彼の話を聞いたところによると、どうやら水影は青い髪の付き人を連れて現れたらしい。付き人はおそらく長十郎だろう。先の大戦でも活躍していた彼は、次期水影に最も近い男だと各国で噂されている。要は里のトップツーがわざわざ遠方から足を運んできたというわけだ。通常、影が自ら動く時は、事前に知らせを寄越すのが決まりで、今回のようなケースは滅多に無い。門番が混乱してしまうのも仕方のないことだし、現にそれは俺自身もそうだ。
とはいえ彼女が急にやってきたのが、と無関係とは思えなかった。彼女の任務先が霧隠れの里の手前とはいえ、その領土は水の国のものだし、今まで連絡をしてこなかったことも含めこの状況は明らかに異質だ。果たしてそれが良いことなのか、悪いことなのか。未だ想像は付かないが、それでも少しでもの情報を手に入れたかった。

「火影さまのご到着だ、みんな道を開けろ!」

異国の影を一目見ようと集まる野次馬たちが、罵声によって端に散ってゆく。すると一本の線のようにできた道の奥に見える妖艶な姿が自分を捉え、にこにこと目を細めながらこちらへ近づいてくる。誰もが振り返るような美人でありながら、その奥に隠されているプレッシャーが半端無い。この新しい時代になったといえど、その凄みに変化はないようだ。

「火影、お久しぶりですね」
「・・・一体どういうことですか」

彼女は至って落ち着いていて、強めの声音で後ろに待たせている長十郎の名を呼んだ。彼はすぐさま反応すると、影分身とともに運んできた大きな駕籠を門の中へと運び入れ、そしてなにやら後ろめたそうに水影の後ろへと下がっていく。落ち着いた所作の水影とは反対に、彼の様子からははっきりと不安が窺える。この二人の差は一体なんなのだろう。運ばれた駕籠に視線を移せば、それは漆に金の装飾が施された、大名を乗せる時に使うような豪奢なものだった。

「開けてみてくださいな」
「・・・水影、これは」

どくんと、心臓が高鳴った。もしかして。この中にいるのは―…。
水影を一瞥すると、彼女は不敵な笑みとともに首を縦に振った。ごくりと生唾を飲み込み、目の前の駕籠の引き戸に手をかける。指先が震えて仕方がなかった。
もしこの中にがいるとするならば。生きているのか、そうでないのか。いや、後者だったとしても彼女の身体が帰ってくるだけで、本来なら忍としては十分ではないか。一度は死まで覚悟した身。どんな結果でも受け容れねばならない。
旋毛まで波打つような鼓動を押さえるべく深呼吸をして、未だ震える手で戸を引いた。


「!!!」


声など出るはずもなかった。それどころか呼吸が止まりかねない勢いだ。
豪奢な駕籠の中には大量に敷き詰められた色とりどりの花と、そこに埋もれるように目を閉じているがいる。一見息をしているようにも見えるが、周りの花のせいで死んでいるようにも見えてしまう。

「こ、これは・・・生きて・・・?」
「ええ、もちろんですとも。丁度火影の誕生日と聞き知ったので、サプライズにと」
「は?サ、サプラ・・・?」
「可愛い眠り姫のようでしょう?」
「は、はあ・・・」
「・・・というのは半分冗談で、話せば長くなるのですがうちの者が失礼を致してしまいまして、そのお詫びに参ったのです。連絡も差し上げずに突然本当にすみません」

すると彼女の後ろにいた長十郎が歩み出て、頭を深々と下げ事の次第を喋り出す。
水の国にある島―それは俺がを任務へと宛がった島―で最近辺りを騒がす巨大な狼が出たこと。それを退治に向かった日が特に霧が濃かったこと。霧の中で蠢く姿を捉えたこと。その姿を例の狼だと思い、新薬である眠り薬を撒いてしまったこと。そしてその時そこにいたのが島の人間を介抱していたであったこと―…。
その新薬とやらは成分の詳細は明かせないが、眠り薬の一種でどうやら皮膚からも沁み込んでいくらしく、一度体内に入ればどんな手練の忍でも即眠りに落ちてしまうという代物らしい。今回は巨大化した野獣であったために、濃度も高く且つ量も多く使用しており、そのせいあってか十日近く目が覚めないものだと説明された。

「長十郎、ちゃんと全てお話しなさいね」
「はっはい、その・・・本来であれば直ぐにご報告しなくてはならなかったのですが、火影さまの恋人と気付き・・・たっ大変なことをしてしまったと・・・。お、お恥ずかしながら、どうにか事を上手く運べぬかと一週間ほど四苦八苦していたところを、水影さまに・・・」
「まったく、それが次期水影と呼ばれる者のすることですか」

水影に咎められた長十郎の頭が更に下に沈む。
の消息が掴めなくなってからの重苦しい日々とは比べ物にならないほど、この状況は何から何まであっけらかんとしていた。それは今起きていることが現実なのか夢なのかも分からなくなるほどに。

「事を隠そうなどと自分でもどうかしておりました、どんな罰をも受け容れる覚悟でございます!」

そして彼が勢い良く土下座をすると、観衆から驚きのような声がざわざわとあがった。

「・・・」

強い風がこの辺りをなぞっていった。刹那、鼻を掠める愛しい香り。
木の葉から彼女を行かせた島まではおよそ三日。任務を終えてすぐに出たとするならば、そこにタイムラグが生じないために往復で五日程度と見込むことができる。つまり九月四日の朝に旅立った彼女は六日の朝には島に到着し、またそこから戻ってくれば八日の内には木の葉に到着するというわけだ。しかし六日の出発予定日に事件が起きてしまった。そこから一週間連絡がなかったのは長十郎が水影から匿っていたからであり、そこからさらに今日までは、水影が先ほど言っていた―半分サプライズであること―から連絡を寄越さなかったのだろう。そうか、そういうことだったのか、と、頭の中で全てがようやく一本に繋がった。

「はは、は・・・」

体中の力が一気に抜けてしまったみたいに、膝から崩れ折れた。また後ろの方から喚声が上がっている。

・・・)

色が、瞳の中に戻ってくる。空気が、体の隅々にまで行き届く。

―ああ、世界はこんなにも。

枯れ果てた大地を潤すように、体内の細胞が生き返るのがわかった。

「ほ、本当に申し訳ありませんでした!」
「私からも。本当に申し訳ありません。さぞご心配なさったでしょう」
「・・・顔を上げてくれ、長十郎くん。それに水影どのも」

そして俺は言った。彼女が生きていただけで十分です、と。
それから駕籠の中で眠るの肌に触れた。確かに。彼女は生きている。するりと滑らせて頬を撫でれば、呼吸のリズムも伝わってくる。自分の中の血の巡りが再び動き出す。
不思議だ。花が見える。光が見える。彼女のまわりに星のように煌くそれらの欠片たち。
横抱きに駕籠から出してやれば、しっかりと重みがそこにある。抱きしめたくて、抱きしめたくてかなわなかった望みが今此処に。自然と一粒の滴が彼女の瞼に零れ落ちていく。



頬を摺り寄せて存在を確かめるのに夢中になっていたからか、近くで水影が「あれを愛と呼ぶのですよ長十郎」と言ったことにも、周りから拍手が起こっていたのにも気が付いたのはずっとあとのことだった。

「そうそう、彼女、何故かこれを大事そうに抱えていたと。勝手ながら開けてお世話をしてしまったんですが・・・」
「お世話?」
「ええ。島の温泉泥を配合した土で作っていて、霧隠れでも有名なんですよ」

駕籠の持ち手に括りつけられた木の葉印の風呂敷袋を手渡される。そっと中身を覗いてみれば、そこにはまたも予想外なものが。

「茄、子?」
「丁度今が食べごろのようですね」
「あ、はは、茄子って」

きっと理由が分かるのは、この場で自分しかいなかったにちがいない。


それからのことはあまり鮮明には覚えていない。とにかくを部屋に運んでやりたかった。
道行く人が次々に振り返ってはその視線を降り注ぎ、彼女がいないと一部の間で噂になっていた忍たちからは「見つかったんですね!」と嬉しい声をかけられた。
水影の話によれば、予定では今日にも目が覚めるだろうが詳しい時間は分からない、とのことで、新薬に関しても眠り薬としての効果に特化はしているが、使っている薬剤は人間の健康に影響はないものらしい。というのも小さな島や山岳地帯を抱える水の国にとっては忍がいない地域も沢山あり、その全ての人々に扱えるような(ある時は野獣や山賊などから自らを守るために、またある時は食料の確保のために)薬の開発を進めていたのだそうだ。
そして彼女らは綱手さまに挨拶がしたいと言っていた。だからそのついでに里内観光はどうかと提案したところ、嬉しそうな声で返事が返ってきた。途中で分かれたあとは、近くにいたサイに急遽護衛を務めてもらった。サイもだいぶ人と上手く付き合えるようになったみたいで、最近では社交辞令も覚えたらしい。長十郎の歯を不思議がりつつも、格好良いと褒めていた。(いや、本気でそう思っていたのかもしれないけれど。)



*



部屋のベッドに、大人が一人沈み込んだ。その横にテーブルから移動させた椅子を置いて腰を据える。

(俺がどんな思いだったか)

きっとは知る由もあるまい。
夢でも見ているんだろうか。それとも夢なんて見ないぐらいに深い眠りに落ちているのだろうか。ベッドですやすやと眠る彼女は、水影が称していたとおり、御伽噺に出てくる主人公のようだった。こういう時は決まって助けに来た王子がキスをするんだったな、と思い出す。キス一つで世界なんか救えるかよ、と思っていた現実主義の子供時代が懐かしい。でも今なら思う。キス一つで愛しい人が目を醒ますなら、いくらだってしてやるさ、と。



生きることは簡単だ。眠りと食事。この二つがあれば人は生きていける。けれどそれは言葉通り「生きている」だけに過ぎないのだ。
その命を飾るのは、とても難しい。

がいると、世界が明るくて、いつも春みたいなんだ。ロマンチストだなんて笑われるかもしれないけど、お前がいるところに花が見える。光も見える。お前が歩けば草木が芽吹いていって、お前が笑うと満開の花が良い香りを放つんだ。それら全部が輝いて、俺に光を与えてくれる」

だからさ、早く起きてよ。俺に笑顔を見せてちょうだいよ。

(・・・荒療治も、ありかな)

チリチリと、手に微弱の電流を発生させた。気付け薬とまではいかないが、多少の刺激にはなるだろう。彼女の手をぎゅっと握り電気を伝えてやると、案の定ピクリと指先が反応した。微かに息の詰まる音がして、期待が膨らむ。良い傾向だとばかりに肩をトントンと叩けば、目覚めはすぐそこまでやってきていた。

「・・・ん、ぅ」
?」

外からの刺激に彼女は眉を寄せた。その表情はどこかアレを髣髴とさせた。絶頂中の顔に近いからか、やけに色気を感じてしまう。そんな不謹慎なことを思っていると、ゆっくりと瞼が開かれた。まだ焦点の合わぬ彼女の瞳が空を捉える。



ぱちりと目が合う。瞼がまだ重たいのかとろんとした瞳が弓なりに曲げられると、彼女は舌っ足らずに「おはよぉ」と呟いた。こいつ。なにが「おはよぉ」だ。まったく。

「俺がどれだけ待ったと思う?」
「へ」
「今日が何日か知ってるか?」
「へ、あ、え?」
「まったく、このばか」

長い長い眠りについていたのだ。頭がまだ起きていないに違いない。でも良い。それで良い。何も分からなくて良い。
寝ぼけ眼をこする手ごと捕まえて、ありったけの力で彼女を抱き寄せた。好きな匂い、好きな触り心地、耳に響く好きな声。たまらず噛み付くように唇を求めれば、そこには自分の全てがあるような気がしてならなかった。そう、彼女が横にいる時の俺の世界は、華やかなのだ。彼女のまわりに花が咲いているように見えるのも、星のような煌きを感じるのも。全ては心が生きているから。

「ふぁ、カ、カシ」
「どれだけ心配したことか」
「え、あの、」
「それに茄子ってお前さあ」
「茄子?・・・あ!」
「ギャグかと思うじゃないよ」

長十郎や水影が、何故が茄子の鉢を持っていたか分からなくても、俺にはすぐ想像がつく。これを愛おしいと言わずして、一体なんと形容すれば良いのだろう。

「カカシの誕生日に食べようって、持ち帰る頃には収穫できるって・・・ってあれ、私、水の国に、いた、ような・・・あれ?」
「色々あったんだよ」
「いろ、いろ?」
「そ、色々」

その話は追々な、とに言い聞かせると、「どういうこと?」と口を曲げられる。可愛くて、でもどこか腹立たしくて。すかさず自分のそれで塞いでやった。

「カカ、んっ、〜〜〜っ」

舌で割り入った彼女の口内には、先ほどの熱がまだ残っていた。気が付けばただひたすらにを求めていた。何度も何度も口付けては、彼女から零れる吐息が頭を沸騰させていく。
息苦しさに追われた彼女が俺の胸元を叩けば、今度は顔の至るところにキスを落とし、彼女の呼吸が落ち着いた頃合を見計らって再び唇に吸いつくのを繰り返す。柔らかな彼女の舌が何度も形を変えていき、次第に応えてくれるようになるが、あまりにも俺が求めるものだから、終ぞ力尽きてしまったとばかりに彼女はされるがままの状態に戻っていた。

「っは、ね、何日ってどういう意、んっも、ちょっと、」
「今日何日だと思ってるの?」
「え?む、六日・・・?あ、でも木の葉にいるんだから八日?」
「違う、十六日」
「え、ええええ!?んぅっなに、それ、・・・っふ、どう、いうっ、ん」
「色々ね、色々。ん、とりあえずさ、ちょっとこのままでいさせてよ」


―光の散らばる、羽毛の海に飛び込んで。



*



一息ついたあとに何が起きたのかを話せば、はあっけらかんとした顔をしていた。眠りすぎにも程がある、と彼女が笑っていたので釣られて笑ったが、それもこれも全ては彼女が無事だったからに他ならない。生きた心地がしなかったと本音を零せば、彼女は「ごめんね」と切ない顔で俺を抱きしめた。
夜、二人で艶やかな濃い紫色の茄子を収穫して、魚屋に活きの良い初秋刀魚を買いに行った。家には庭がないために、職権乱用で火影邸の屋上に、七輪やら炊いたご飯やら酒やらもろもろ持っていったが、きっと今日ぐらいこんな我儘をしても許してもらえるだろう。
煙に燻されながら食べる秋刀魚や茄子は最高で、も俺も目が痛いなんて言いながら笑い合って。

「ほんとは一緒に茄子育てて、誕生日カウントダウンしたかったのになあ」
「ま、命あっての物種でしょ。茄子なら来年一緒に作れるさ」
「・・・そうね、そうよね。はあー、なにはともあれカカシのところに帰ってこれて良かった」
「いや〜最悪の誕生日になるところだったよ」
「ごめんね、一日遅れちゃったけど・・・お誕生日おめでとう」

晴れた夜空に浮かぶ月を見ながら酒を仰ぐ。ああ。今夜はよく眠れそうだ。

















「時に長十郎くん、一週間ぐらいを隠してたって言ってたけど、その間お風呂とか入れてくれてたの?」
「あ、はい。衛生状態はできる限り保っていました」
「寝てた割には身体がやけに綺麗だなって思ってね」
「それはきっと島の方が温泉泥をくださったので、その効能があったのか、と・・・?」
「へえ、温泉泥。ん?どうしたの?」
「(はっ・・・つまり、二人は愛の営みを・・・)い、いえ」
「・・・見たの?」
「はい?」
の裸」
「へっ、あ、それは、」
「見たんだ、で、泥を塗ったんだ」
「ち、違いますよ!昔馴染みの女の子に・・・!」
「ふうん、女の子、ね」
「しっ信じてください!僕は感電死なんかしたくないんですから〜〜!」
「はは、すまんすまん。冗談だよ。ありがとな、そこまで気を使ってくれて」
「いえ、こちらの落ち度ですからそんなの当たり前です!(目が笑ってないよこの人)」












(2015.9.15 カカシ先生お誕生日おめでとうございます!めいこちゃん企画主催本当にお疲れ様でした!)
(2017.5.23)                CLOSE