上目遣いでちらりとこちらに目を向けたの頭をカカシは軽く撫でると、彼女の髪をかきあげるように手を差し入れた。指先から伝わる頭皮の温かさとこれからやってくる期待とが交じり合う。何がこの行為へのきっかけだったのをさっぱり忘れてしまったが、そんなものもうどうでも良かった。だって今ここで大事なのは理性よりも本能なのだから。












露になった太腿の内側には舌を這わせた。普段鍛えている男の身体とはいえこの部分の皮膚は柔らかく、肉感も十分だ。細めた舌先を陰部へ向かうほどにねっとりと面で密着させていく。伏目がちの瞼からはっきりと分かる長いまつ毛がとても美しく、カカシは彼女にイニシアチブを全て譲り、成すがままにされることを享受した。
周りからじわじわと攻められるのは嫌いではなかった。ベッドに腰を降ろす自分とは対照的に、床に座りこんで事に及ぶ様が支配欲を満たすのは間違いないし、同時に潜在的なマゾの部分を揺さぶられるのも確かだ。とはいえ相反する感情の存在以上に、性に従順なの姿を見るのが好きで、自分のことを思ってあれやこれやと舌技を使って奉仕をしてくれる姿はカカシにとってたまらない光景なのだった。

付け根から睾丸へと舌を移すと、カカシの腿が微かに強張ったのをは見逃さなかった。良かった、感じてくれている。その気持ちが彼女の心にさらに火を点ける。半分ほど勃ちあがった彼の肝心な部分を避け、首の角度を変えて肌をより密着させると、再び細くした舌先で皮膚に触れるか触れないかほどの刺激を与えた。すると今度はカカシの臀部全体がひくりと震えた。同時に上の方で息の詰まる音も聞こえる。その時の頭にはふと、以前彼に言われた一言が想起されたのだった。

―身体は正直だな。

あなたも今はそんな状態よ、とは内心不敵な笑みを浮かべながらも、普段感じることのない嗜虐心に身を任せ行為に没頭する。己の髪の毛が柔肌に当たるのすら今は快感に変わっているのだろう。
睾丸に広がる皺に沿ってちろちろと舌を這わせ、唾液を纏わせた舌で包み込むように円を描く。締まったそれに彼女は目を細めた。仕上げと言わんばかりに真ん中にあるとりわけ太い皺に、わざとリップ音付きのキスをしてから舐めてやれば、カカシの腹筋に力が入るのが分かった。綺麗に割れた腹筋が臍下に向かって波立つ。自身の頭をやんわりと撫でていた手にもまた力が入ったのを感じたが視線だけ上に向ければ、すっかり上を向いた陰部と、湿った息を吐く艶を孕んだ男の顔がすぐそこに。

(う、色っぽい顔してる)

攻めてるこちらが戸惑ってどうする、と思うほどにカカシの表情は色気に満ちていた。人より白い肌をしているから余計そうなのだろう。

「・・・

掠れた声が部屋に響いた。その声音には明らかに催促が含まれているがは気が付かないフリをする。
空いている手で太腿をさすり、なおも中心部を無視して舌を使っていると、頭にあったカカシの手が彼女の手の上に重ねられた。一回り大きく、同じように興奮によって熱を持った節くれだった手は、行為を中断させるのではなく、今しがた自分にされたのと同じように彼女の皮膚を滑った。だからは肌を通してカカシの快感を流し込まれているような気がしてならなかった。
相乗効果とでもいうのだろうか。恋人の触れるところ全てが性感帯へと変貌していく。



二回目の声音は一回目よりももっと切実だった。
その証拠に陰茎から溢れた先走りが皮膚を伝って下へと流れており、これ以上ない興奮を露にしている。

「すっかり元気だね、カカシの」

そう言って垂れてきた透明な滴に指先で触れてやれば、それはしっかりと糸を引いて部屋の明かりを吸い込み一本の銀色を作り出した。まじまじと嬉しそうに見つめるとは裏腹に、羞恥心に僅かな傷を付けられたカカシ眉が恥ずかしげに下がる。

「こうさせた本人が何言ってんだか」
「気持ち良い?」
「すっごく。最高。だからさ、

「早く舐めて」と言う代わりにカカシは自身の勃起した一物の根元を持って、先走りの溜まる尖端をの口元に密着させた。ふっくらとした―細かく言えば唾液でしっとりと濡れていて生温かい―唇に当たっただけだというのに、果ててしまいそうなほどの快感がカカシの身体を足先から頭のてっぺんまで駆け抜けた。早く、早く赤くて熱い生き物に飲み込まれてしまいたい。その期待が無限に増幅していく。

唇を陰茎で塞がれて言葉を封じられたは目を細めることで返事をし、快感にギラつく人間が待ち焦がれる舌をそっと尖端に這わせた。先走りの仄かな塩気が口の中に広がり眉間に皺を寄せると、およそ手では出せない動きをする舌の感触に大きく息を洩らすカカシと。
部屋の中に充満する卑猥な空気の濃度が、とどまるところを知らずに高まっていった。

口内に溜めた唾液とともに亀頭を丸ごと咥え、周りの張った部分を唇で甘噛みしながら刺激してゆく。その間も出続ける先走りを上手く利用しながら亀頭全体を濡らせば一段と陰茎が大きくなったような気がした。愛撫もそこそこに今度は浮き上がる血管に沿って舌を這わせる。それがカカシには気持ち良かったようで、彼は顔を天井に向けて目を瞑って歯を食いしばった。すると自身の体を支えるためにベッドでつっかえ棒にしているカカシの腕がふるふると震えた。血管の浮き出た太い腕の艶かしさと、力が入るからか格段強調される鎖骨とが男らしく、野性味すら感じさせる。スレンダーに見えて脱ぐと筋肉質なことをは再確認させられるもすぐさまその雑念を消し、口内の肉に意識を収束させる。

「・・・ッ、は」

快感をやり過ごし、熱と湿り気を帯びた息を吐くと、カカシは力の抜けた顔でくしゃりと笑って自分の息子に夢中で奉仕を続けるの手を掬い取った。
先程よりも温かいところから察するに、彼女も興奮しているんだろう。一本一本絡めてぎゅっと握ってやれば、彼女からもまた力が返される。

「いきそう?」

一度口内から陰茎を解放するもはすぐさま距離を詰めてカカシを攻めにかかった。
裏筋を上から下へと何度も何度も往復しては雁首を縁取るように弄び、零れる透明の滴を舐め取るために尿道を穿る。その度ごとに発せられる肉を食む音はお世辞にも上品とは言えなかったが、ぐずぐずに崩れた二人の脳内には甘美な響きだった。
腹にくっつくように舌で陰茎を舐めながら押し上げると、皮膚を隔ててすぐにある尿道への快感と、元の勃起位置に戻ろうとする反動で陰茎がぺちんとの頬を叩いた。

(げ)

彼女の片目がぎゅっと閉じられたその表情によって何とも言えぬ支配感を得たカカシがごくりと息を飲んだ。
それを知ってか知らずか―恐らくは無意識の内だろうが―は直ぐにまた咥え出すのではなく、横笛を吹くように陰茎の根元にキスを落としたのだが、それがまさに彼には忠誠を現す印のように思えてしまったのだった。

(えろい、ほんとこいつどこまで)

自分の心を掻き乱せば気が済むのか―…。
苦しそうに、けれども楽しそうに自分に愛を注ぐ彼女の表情は、普段忍として外で生活をしている姿からは想像も付かない。きっとこの顔を知っているのは自分だけ。その思いは、ある意味この場の最後の主導権だった。
しかし最早そんな下らないことは考えてはいられない。先走りに白濁が混ざり、脈打つ己の聳え立つものが限界を訴え始めた。最初はの中で果てたいという気持ちがあった(やはり性の遊びは二人で楽しむものでなくてはならない)が、今では彼女の口に全てを出してしまいたかった。顔に出すのもそれはそれで良いものだし、精液に濡れる恍惚とした表情は至極良いものだ。しかしどこまでも自分を食む唇がどこまでも愛おしかったし、どこまでも自分に尽くそうとしてくれる彼女の心がやはりどこまでも愛おしかった。
そうこう考えている間には再び陰茎を大きく咥え込んだ。全部を含むことはかなわず、残った根元部分は空いている方の手を添える。そしてグラインドをするように窄めた口を動かし、時には舌の根元で亀頭をぐりぐりと刺激し緩急をつけることで着実にカカシを果てへと導いていった。

、そろ、そろっ」
「ん」

「出して良いよ」、とはカカシを咥えたままもごもごと返事をした。口の中で蠢く振動すら大きな一打となるらしく、彼の内腿がひくりと震える。中心に集まった血が更に出口へと昇りっていくその頃合を、陰茎の震えから読み取ったは口内を可能な限り真空状態へと持っていき、そのまま何度も前後に顔を動かした。眉を寄せ、睫毛の震える男の、性を炙り出された表情が、奉仕する側の何よりの充足だった。

「げ、それ、っあ、、出・・・ッ」

我ながら情けない声だと思いつつも、込み上げ押し寄せる激動を止めることはできない。
吸われながらも亀頭周りを舌でぐるり舐めまわされたところで、カカシは今日一番の力強さで握る手に力を込めてその全てをに放ったのだった。

「はっ・・・あ」
「んう、ぅ」

二三度に分かれて放たれた熱に咽ないようには口奥を舌の根元で覆う。苦しそうに眉を顰める表情が艶やかにカカシの目に映った。

「・・・っふ」
「あ、まだ、」
「ひゃっ」

普段の射精の具合から見てもう出ることはないだろうと踏んだのだろうが、どうやら今日はそういうわけにはいかなかったようで、が口から陰茎を出しかけたところで泣きの一射が飛び出たのだった。それは少量だったが彼女の頬にべっとりとくっつき、しばしの後に重力に従ってゆっくりと垂れ始める。
思わぬ顔射に驚きながらもは口内の精液をごくりと飲み干した。彼女の喉の動きでもってそれをしっかりと見届け満足したカカシが「あー・・・気持ちよかった・・・」と脱力の声を洩らす。

「ん、ほら、これも舐めて」

頬に飛んだ半透明になりかけた精液を親指で拭い、そのままの口に突っ込む。彼女は反論のありそうな顔をしながらも、飼い猫よろしく綺麗に舐め取るのだからたまらない。
先ほどと比べればうんと慎ましやかな舌の動きだが、そこはかとなく散らばる性の欠片を集めるようなその姿はとても淫靡で、カカシは指を抜き取ることが出来ない。否、抜き取ろうとしなかった。

「いつになくノリノリじゃない?お前」
「そういう気分なのかな、もっかいする?」
「ま、それもいいけどさ」

口から指を抜いたカカシは両腕でもっての身体をベッドに引き上げ、そのまま自分の下に組み敷いた。
さながら肉食獣のような眼光が獲物を捕らえる。やはり在るべき場所はこの位置だという確信が、カカシの口角を上げさせる。

「今度はも、な?」

一転した視界には微笑んで目を閉じた。



















(2015.11.28 山なし落ちなしフェラ話)
(2016.7.10 修正)              CLOSE