なんで。なんでこんなに気持ちが良いんだろう。もちろんそれは、性的な意味で。
の中は果てしなく気持ちが良かった。この快感を味わっていたいが故にいつも吐精が憚られる。そんなだから彼女と初めて身体を繋げたあの日から、セックスに要する一回の時間は確実に長くなっていた。だから世間で言うところの身体の相性が良いというのは、きっとこういうことなんだろうとふと考える。職掌柄、毎日毎日一緒に過ごせるわけではないからか、所謂倦怠期というものは滅多にやって来なかった。それどころか、会えない時間が愛を育むなんて体の良い言葉よろしく、長期任務の後は年甲斐も無くがっついちゃったりしてさ。そういう時は決まって、俺ってまだまだこんなに性欲あったんだ、って驚く程ガキ臭いセックスだったりするけれど。だけどこうして余裕のある時は、少しでも長く快感を貪っていたかった。じれったい程時間をかけた愛撫で、身体の奥底から情欲を炙り出し、引きずり出して喰い尽くしたい。

「・・・っぁっは、だ、め、カカシっカカっ」

迫る快感につらいと涙を流すの顔は極上で、その顔を見ると背筋がぞわぞわとした。支配欲は男の下らない精神を満たすのに大きな貢献を果たしてくれる。彼女を組み敷いているのは他の誰でもないこの俺であり、彼女にあられもない姿をさせられるのもまた、この俺だけだ。快楽に喘ぐ姿がたまらない。駄目駄目なんて言うくせに下はしっかりがっついてますよお嬢さん。
ぽろぽろと零れる涙が肌に跡を残し、睫毛を濡らしていく。うっすらと皮膚に滲んだ汗で前髪が額に張り付き、肌をより一層艶やかにする。吸い付き過ぎた唇は少し腫れぼったくて、そこから吐き出される上気した息と、上ずった甘い声。

(えろいなあ)

しかしまだだ。まだ足りない。
力無く開かれている唇に再度噛み付くようにキスをすれば、くぐもった苦しそうな声がした。塞がれて逃がす当ての無いそれは俺の口内に振動するだけ。ぐしゃぐしゃだ。だけどそれが良い。平生からは考えられない羞恥にまみれたこの姿が良い。そう、良いのだ。行き過ぎた支配欲が嗜虐性を生み、の啼いている姿を見ると、もっともっとと啼かせたくなってしまう(セックスの時限定だけど)。

「こーら、逃げない」
「んっ、あっ、あぁっ・・・ッひあぁん」

徐々に逃げ腰になる彼女の腰を掴んで、ずん、と抱えなおすようにこちらから腰を進めれば、身体が素直に反応する。絡み付いてくる内壁はまるで意思を持った生物のようだ。首に回されたの手がどんどんと落ちてゆくので、過ぎた快感に追いつけなくなる前に一息つけてやれば、蕩けるような潤んだ目が俺を捉えた。いいねその目。腰にくる。

さ、上忍なのにそんなに体力無くて良いの?」
「うっ、るさ・・ッあっも、ぉ」

少しだけ敵意を持った目つきも中々良かった。
男の身だからよく解からないが、曰く、身体のコントロールを奪われてしまっている、らしい。それぐらい気持ちが良いということなら、この上ない褒め言葉は無いのだが、と、いつだったかのそんなことを思い出しては口元が綻ぶ。しかしそのことにすら気が付いていないは喘ぎながらも、脱力して思い通りにならない腕を動かそうと必死だ。ようやく俺の首に帰ってきたかと思えば、汗のぬめりも相俟ってまた直ぐに落ちてしまったのだった。

「は、ぁ、カカシ、おねが・・も、だめ」
、舐めて」
「ふぇ・・・っんぅ」

右手の親指をの口内に突っ込み他の四本で頬をさすってやる。耳元で低い声でもう一度先程の台詞を囁けば、はふるりと肩を震わせた。そして俺を一瞥すると、ゆっくりと口内を動かし始めたのだった。
生温かい舌が指を包み込む。溜まり始めた唾液が絡み、キスとはまた違った音が空間を支配する。下はちゃんと繋がっているのに、なのに自分の物を舐めさせているような彼女の顔。時折ちらつく赤い舌がやけに際立って脳裏に焼きついていく。ふにふにとした独特な感触のこの器官の気持ちよさを、どう形容したらいいだろうか。
丁度良い頃合を見計らって抜き出せば、唾液に濡れる唇が光って余計にいやらしかった。

「あっぁっそれっや、はぅ、あぁっ」

そんなべとべとに濡れた親指でしっかりと主張する陰核を弄ると、強すぎる快感にはかぶりを振るが、そんなことお構いなしに指の腹で更に刺激を加えていけば、段々と暴走していく脳が更に彼女を求めてしまう。
は刺激に耐えるようにぎゅっとシーツを握り締めていたのだが、次の瞬間には彼女の腕が震えながら俺の顔に伸びて来てくるものだから、俺はそれに応じて全ての動きを止め、その様子を目で追っていく。すると震えた指先が頬に当たる。触られた部分がじんわりと熱を持つのが解かった。そしてゆっくりと撫でられたかと思うと、そのまま指先が性的に首元へと降りてきた。ぞくぞくと背筋に悦楽が這い上がるのとは反対に、の指はどんどんと皮膚を滑りながら落ちていく。胸板から腹筋の窪みを過ぎ、脇腹を通り、そして結合部へ。

「おねがい、カカシ・・・っ」

色情に濡れた眼差しが、俺を捉える。

(全く、こういうのどこで覚えてくるんだか)

煽る仕草にこれでは息子も反応しっぱなしだ。下腹やら陰茎の根元やらをさするの手と、だらりと伸びている反対の手を掴んでベッドに強く縫い付けてやれば。
驚いた彼女の背中が反り、胸元がより露になった。なので、お返しと言わんばかりに彼女の首元から舌を這わせ、降ろした先の主張させているそれを食めば、高い声が寝室に響き出す。尖らせた舌先で突起を転がすと、下の口だけでなくこちらの感度も非常に宜しいのだから嬉しい限りだ。
動きを止めていたことで快感に貪欲になったの秘部が、きゅんきゅんと食い付いてくるものだから、その締め付けに刺激され、こちらもも大分限界のようだった。

「はは、イきたい?」
「・・・っん、はや、く、カカシっ」

いつか彼女に卑猥な言葉を吐かせたいなどと下衆なことを思い浮かべながら、汗で張り付いた前髪をどけてキスを落とした。しょっぱい味のまま唇に吸い付けば、舌の絡み合う音が今度はお互いの耳を狂わせ始める。恥じらいも何もかもが無くなって、ただ只管本能だけを追い求めるようになって。
そうしての足を思い切り開かせ緩やかに抽出を再開すると、次第に息が荒々しくなりキスを保つことすら困難になった。かくいう俺自身も息が上がり、よりも先に終わりを迎えぬようにと、そのことを考えれば考えるほど余裕がなくなり始める。休む間もなく身体を揺さぶれば、それにあわせて乳房が揺れるのが目に入った。柔らかな弾力が揺れる様はいつ見ても至極の光景だ。

「あっ、カカッ、い、っちゃ、いっ、」
「いいよ、イって・・ッ」
「ぁっあっあっあっ・・・あぁんっ」

声を上げるしかできないが、眉根をぎゅっとよせて俺の腕を掴む。彼女の果てはもうすぐそこだ。縋るのに応えてやるように身体を密着させれば、乳首が肌に擦れるのがたまらないらしい。甘ったるい声で絶頂を迎えた彼女の秘部がギチギチに陰茎を締め上げ、収縮を繰り返した。その刺激に耐え切れず中に欲を吐き出せば、それすらも快感として追うようにの体が震える。俺が吐き出してからも彼女の内部は痙攣しているかのように何度も何度も蠢くものだから、こういう時しばしば思うのだった。女の絶頂というものは、それはきっとすごい快感を得ているのだろうなと。ぎゅっと丸められた足先から力が抜けてだらしなく落ちていく。肩で息をするは何も言わず(というよりも言えず、なのだが)、かろうじて俺を見ているようだが放心状態だ。
ベッド脇のテーブルに置かれた時計を見れば、事に及んだ時間からかなり経過していて、今日は記録更新かな、なんて直ぐに現実に戻ってしまうのだから男はつまらない。ゆっくりとの秘部から陰茎を抜き出すが、出口付近で雁首が少し引っかかる。その刺激にも感じてしまったのか彼女が身を捩じらせて甘い声を漏らすのが嬉しかった。
最後まで抜き取るとお互いの体液で陰茎がてらてらと光っていて。
膝立ちになり、の腕を掴んで身体を起こさせ、その陰茎を彼女の口元に持っていく。何をさせたいかは解かっているだろうに彼女はジト目でこちらを見上げてきた。

「・・・またあ?」
「ん、お掃除フェラよろしく」
「も、この変態め」

悪態は付くけどなんだかんだで言えばしてくれるんだから、ちゃんも嫌いじゃないんじゃないの?なんちゃって。
呼吸の整った彼女の口から出た赤い舌が亀頭に触れた。ぬめりとした感覚が射精後の敏感な性器を刺激し、酷く気持ち良い。時折上目遣いでこちらを見てくるのがたまらなかった。

「は、あ・・・きもちー」

根元付近まで一気に口に含まれ、尿道に残った精液がの口内へと吸われていく。

(あ、精液垂れてる)

視界に入ったの内腿から、先程中に放った己が欲がたらりと垂れていて。卑猥だ。この上なく卑猥だ。放った俺自身が言うのもなんだが、兎に角卑猥だ。頭の中がチカチカして、眩暈がしそうだった。本人にその気は無くとも一体何処まで俺を煽れば気が済むのか。失われかけた熱がまた力を取り戻そうと中心に血が集まるのが解かった。意識してしまえば後は簡単な話だった。だって視界に入る情事の爪跡を集めるだけで良いのだから。

「ちょっと」
「あのね、がいけないんでしょーよ」
「わたしのせいなの?」
「ほんとお前エロすぎ」
「じゃ、じゃあ・・・も・・かい、・・る?」
「え?なに?」
「・・・・・・も、もっかい、す、る?」

もう一度付き合ってくれるのが諦めからなのか、自身の希望からなのか、正直解からなかった。けれどこんなにも可愛いお誘いを断る必要がどこにあるだろうか。上目遣いで、顔を赤らめて。の恥ずかしそうな顔が心の底から好きだ。
そして思う。明日の遅刻の言い訳は何にしようか、と。






(2014.4.26 bis deinem Ende → 君の終わりまで)
(2016.3.11)               CLOSE