※性描写があります。苦手な方はブラウザを閉じてください。なんでも許せる人向け。

















どうして中途半端に疲れている時の方が人は性欲が増すのだろう。いや、人と言うか男が、か。ああ、あれか。生存本能という奴か。生きる力を失う前に子孫を残したいという古の本能が炙り出されでもしているのかもしれない。
最後に抜いたのはいつだったろうか。考えるまでもなく余裕で片手で足りるな。それもこれも全部仕事のせいだ。徹夜を挟むから体に負荷がかかって仕方がない。趣味だとか、したいことは沢山ある。でも仕事が原因でそれをする時間がない。だから余計にストレスの捌け口を失い、溜まりに溜まってそれが性欲へと変わり果てる。性欲なんて昔はそうでもなかったのに、この仕事に就いてからはなんだか増した気がしてならなかった。

「・・・ッは」

ソファに浅く座って既に半勃ちになったそこに下着越しに指を沿わせる。一人暮らしの寂しい部屋に響く虚しい男のくぐもった声。自分の愚息など見ずともその形の変化ぐらい余裕で理解できる。

―零さん、もう大きくなってる。

瞼の奥の彼女はいつだって淫靡に俺を誘惑する。彼女と出会う前までは、好みの系統の顔をした女の写真や動画がオカズだったのに、今じゃ専ら妄想ばかりだ。
普段は性のことなんて何にも分かりません、みたいな純真な笑顔が夜になると変貌するベタな展開がたまらない。はしたなくボクサーの下で膨らむそれを前に期待で胸を膨らませる彼女の頬は赤く上気していて、目がきらきらと輝くのだ。

「はぁ、、」

はやく触ってほしい。手の平でソコを何往復かして、たまらず下着の隙間からグロテスクなイチモツを取り出すと、ほんの少しだけ彼女が怯む。そう、相手が君だから俺のソコはこんな風になってしまうんだ。そしてこれからこんな凶器にめちゃくちゃにされるのだと思わせることが非常に重要なポイントと言ってもいい。

「ふ・・・」

手の平で包み込むように陰茎を握り、ゆっくりと上下に動かし始める。脳内ではまだ服を全て脱ぎ去っていない彼女のシャツのボタンに手をかける妄想を繰り広げながら。次第に露になる素肌。恥ずかしそうに視線を逸らされるのも良いかもしれない。きっと気恥ずかしさからもじもじと体をくねらせるだろうから、なあ、誘ってる風にしか見えないぞ、なんて言えば殊更顔を赤くするに違いない。それで柔らかな唇を食み、息継ぎもさせないほどしっかりと舌を絡めてその感触を心ゆくまで堪能するのだ。

「・・・ッ」

そんな姿を想像すれば、平常時では雁首に少し皮が被るぐらいの愚息はもうギンギンにその存在を主張し始めていた。興奮が強くなったのを良いことに指の数を減らして、親指と人差し指と中指の三本で亀頭から下の皮だけを、根元から扱きながらカリに触れずに快感を高めていく。疲れた体を巡る血がどくどくと陰茎に集中していくのが分かる。いくつになってもこの感覚は本当にたまらない。吐く息にこもるこの熱が彼女のものだったらいいのに。ああ。彼女は一体どんな風に喘ぐのだろう。一体どんな風に善がるのだろう。
自分好みで仕立て上げた彼女のブラを外せばぷるんと震える双丘が露になる。その頂はすでに慎ましやかに主張していて、いかにも今すぐ食べてくださいと言っているかのようだ。きっとまじまじと見つめたならば目に涙を溜めてこちらを睨むのだろう。ふわふわしてそうに見えて負けず嫌いな一面を持つ彼女だからこそのささやかな反抗だろうが、そういう状況では全く無意味で、むしろ煽りの一つにしかならないのに。でもきっと、彼女ならばこそ愛おしいのだ。

「はッ、・・・くぅ」

完勃ちのそこから零れ出す我慢汁が裏筋へと垂れていく。それ以上下に行かぬようにと指で掬い上げて亀頭全体に塗りこめるようにすると、にちゃにちゃと卑猥な粘着音が耳を襲った。自分の右手をに重ねるように時折逆手にして扱けば高まる感度もひとしおで、腰がひくりと浮き上がる。

―零さん、ネバネバしたの出てきちゃいましたね。

脳内に恥らう彼女と性に貪欲な彼女の二人が同時に存在している。後者はいつも楽しそうに上目遣いで俺を見つめては隙あらば辱めようとしてくるのだ。
そんな強気な彼女にいつもぶっかけてやりたいと思ってしまう。己の白に汚された彼女の顔はきっと絶景だ。零さず飲めよ、なんて顔に飛んだ白濁を指で拭って口の中に捻じ込んでしまいたい。ああ、なんて嗜虐心で一杯なんだ、自分は。でも怒らないでほしい。普段の彼女からは絶対に覗くことのできない姿を性欲のためだけに脳裏に描くこの行為。そこに溢れる罪悪感こそ男にとってたまらないのだということを。そう、これが男っていうものなんだとしれっとした顔で正当化できるぐらい、男はあけすけな生き物なんだよ。

「ぁ、は・・・、ッ」

いつのまにか足も口も閉じることを忘れて、ソファの背もたれに頭を押し付け喉をさらしていた。現実の己の滑稽な醜態とは真逆に、脳内では艶やかに色めくがそのしなやかな体を寄せてくる。幾度となく想像したそのすべらかな肌。背中を反らせた分、二つの膨らみが極上の柔らかさで俺の体に密着してきては、その弾力が汗ばんだ肌を通って伝わってくる。
男にはないそのやわらかな胸元に、自分だけの所有印を刻むことができたならば。彼女は肌が白いからきっと綺麗に映えるはずだ。

「ん、ッ」

耳元で彼女が囁く。「零さん」と。偽物なんてこと分かっている。けれども腰が疼かずにはいられない。もぞりと腰をくねらせて、また手の平で包むように陰茎を握って、今度はカリも一緒に強めに扱いた。体を襲う激しい快感に肩を震わせる。溢れる我慢汁に少しだけ白が混じり出す。それらが手を伝って陰部全体に伸びていくのも気にせずに、時折尿道に指先を引っ掛けながら腰を動かして高みだけを目指した。
次第にこみ上がってくる射精感。早く出してしまいたいけれど、出したら脳内の彼女は消え去ってしまう。もう少し、もう少しだけ夢を見させてくれないか。
なんどもなんども、嘘の世界で彼女の素肌に触れた。やわらかな髪の毛に手を差し入れて、時には掻き抱くように荒々しく引き寄せて、なんどもなんども触れたのだ。赤に染まる耳のでこぼこに、なだらかな瞼の丘に、涙に滲む睫毛の先に、汗ばむ頬に、前髪が張り付く額に、すらりと伸びる鼻先に、ふっくらとした唇に、うっすらと産毛の生える項に、浮き上がる鎖骨に。そして切ない顔で、俺を見つめる潤んだ瞳を脳裏に焼き付けるんだ。

「はっ、ぁ、っ、」

ただただ、彼女とともに果てたかった。

「くッ、ぅ、あぁっ」

残った理性で乱雑に引き抜いたティッシュを亀頭の先に被せれば、本来の行き場を失った不毛な精液が数度飛び出ていった。刹那の多幸感に身を投じて、尿道に残る白濁を押し出すように陰茎を扱く。ぷっくりと浮き出たそれを面を変えたティッシュで拭うと、射精したばかりの敏感な亀頭への刺激にぶるりと体が震えた。

「はあ・・・は、」

押し寄せる虚無の波。夢が醒めるのが男はいつも早いからつまらない。急速に戻ってきた現実の空気が火照った体に冷ややかに降りてくるのをひしひしと感じながら、大きく息を吸っては新鮮な酸素を肺に送り込み、そしてまた大きく息を吐く。時計を見たらすっかり零時を過ぎていた。












(2017.7.21 heute ist es 21.7!=今日は7月21日!)   CLOSE